確定申告時の損益通算のやり方ってどうするの?こんな疑問がある人も安心してください。歯科開業支援と確定申告を得意とする税理士として30年以上顧問先様の確定申告に携わってきた私が、この疑問にお答えできます。今回は、知ってる人だけが得をしていて、ほとんどの人が理解していない損益通算についての解説をしていきます。
目次は、読みたいところをタップして飛べます。
損益通算の概要
最初は、損益通算の概要についてです。
「損益通算ってなに?」ほとんどの人が聞いたことがない又は、聞いたことはあるが、理解していない言葉だと思います。
損益通算とは、一定の所得の計算上生じた損失を、利益が出ている他の所得から差し引く制度のことです。
例えば、事業所得の計算上生じた損失が-500万、不動産所得の計算上生じた利益が600万だとすると
損益通算を知らないで申告すると事業所得は0となり、不動産所得の600万に対して税率がかけられて税額が計算されます。
しかし、損益通算を知っていると事業所得の損失-500万を不動産所得の利益600万から控除することができ、
結果、合計所得が100万になり、100万に対して税率をかけて税額を計算することになります。
このように損益通算を知っていることにより合計所得を500万も減らすことができるので、税額も低く抑えることができます。
ただし、損益通算できる所得は限られています。
損益計算の順序も決められていますので、その辺を正しく理解しなければなりません。
損益通算について分かったところで、次は、損益通算ができる所得とできない所得につい てお話していきます。
損益通算できる所得
次は、損益通算できる所得についてです。
所得の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算できる所得は以下の所得です。
不動産所得:土地や建物の貸付などによる所得
事業所得:各種事業を営むことによる所得
譲渡所得:土地や建物及び株式などの資産を譲渡することにより生ずる所得
山林所得:山林を伐採して譲渡したり、流木のまま譲渡することにより生ずる所得
損益通算できない所得
次は、損益通算できない所得についてです。
所得の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算できない所得は以下の所得です。
利子所得:預貯金などの利子による所得
退職所得:退職手当など退職による所得
利子所得及び退職所得は、所得金額の計算上損失が生じることがないからです。
配当所得:株式の配当金などによる所得
給与所得:給料及び賞与などによる所得
一時所得:営利などを目的としない一時的なものから生じる所得
雑所得:利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、山林所得、給与所得、退職所得、及び一時所得のいずれにも該当しない所得
配当所得、給与所得、一時所得及び雑所得の金額の計算上損失が生じることはあります が、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。
損益通算できる所得とできない所得が分かったので、次は、損益通算の計算方法について話していきます。
損益通算の計算方法
次は、損益通算の計算方法についてです。
損益通算をするときには、一定の順序が決められています。
損益通算の順序
次は、損益通算の順序についてです。
損益通算は、次の順序で行います。
最初に所得をA経常所得グループとB譲渡所得・一時所得グループに分類します。
A経常所得グループ:事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得
B譲渡所得・一時所得グループ:譲渡所得、一時所得
①不動産所得又は事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は、Aグループ内の他の所得の金額から控除します。
②譲渡所得の金額及び一時所得の金額の計算上生じた損失は、譲渡所得の金額の計算上生じた損失のみを一時所得の金額から控除し、一時所得の金額の計算上生じた損失は、打ち切ります。
③Aグループ内の損益通算を行ってもなお引ききれないAグループの損失の金額は、Bグループ内の損益通算後の金額から順次控除します。
④Bグループ内の損益通算を行っても引ききれないBグループの損失の金額は、Aグループ内の損益通算後の金額から控除します。
⑤③又は④の計算を行ってもなお引ききれない損失の金額は、これをまず山林所得の金額から控除し、次に退職所得の金額から控除します。
⑥山林所得の金額の計算上生じた損失の金額は、これをAグループの金額から控除し、次に、Bグループの金額から控除し、最後に退職所得の金額から控除します。
⑦上記⑥までの損益通算の計算をしてもなお引ききれない損失の金額がある場合には、その年分の純損失の金額となります。
損益通算の順序の全体像を表にまとめたので、確認してください。
損益通算の注意点
次は、損益通算の注意点についてです。
以下の損失は、損益通算することができません。
①不動産所得の金額の計算上生じた損失のうち、土地等の取得に係る借入金利子の部分
②個人に対して資産を低額で譲渡したことにより生じた損失
③競走馬、別荘、書画、ゴルフ会員権、骨董品など生活に通常必要でない資産の譲渡により生じた損失
④非課税所得(生活用動産の譲渡など)の金額の計算上生じた損失
⑤分離課税の対象となる譲渡所得(土地、建物等)の計算上生じた損失
⑥株式等の譲渡により生じた損失(上場株式等の譲渡損失については特例あり)
まとめ
それでは、ここまでの内容を振り返ってみます。
「確定申告時の損益通算のやり方」について悩んでいる人のために
「損益通算の概要及び損益通算の順序」についての解説
- 損益通算の概要:一定の所得の金額の計算上生じた損失を、利益が出ている他の所得から差し引く制度のことです。
- 損益通算できる所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
- 損益通算できない所得
- 利子所得
- 退職所得
- 配当所得
- 給与所得
- 一時所得
- 雑所得
- 損益通算の計算方法:損益通算は、一定の順序が決められています。
- 損益通算の順序:一定の順序に従って損益通算をしなければなりません。
- 損益通算の注意点:一定の損失は、損益通算することができません。
この記事を書いた想い
今回、「確定申告時の損益通算のやり方|知ってる人だけが得をする損益通算の解説」をテーマに記事を書いたのは、歯科医院の院長先生から、「損益通算はどうやればいいの?」という質問をよく受けるので、それならば、確定申告時の損益通算のやり方について書いてみようと思ったからです。
そのためには、損益通算の概要などについて詳細に解説をしたほうが分かりやすいと思ったので、損益通算の概要などについて詳しく書いてみました。
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「歯科医院を開業する多くの先生方に本当に成功してほしい、そして歯科医院の廃業を減らしたい」そんな想いから歯科医院の院長先生に確定申告で損をしてほしくないという気持ちからこの記事を書きました。
歯科医院を開業する院長先生の確定申告のお悩みを解決することにより歯科医院経営で成功することを心から願っております。
最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。
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